美しくも悍(おぞ)ましい世界。冬虫夏草(とうちゅうかそう)。

キノコ

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それは一匹?のお土産から始まった。

友人とキイロスズメバチの巣を捕獲しに行った時のこと。

実際にスズメバチの巣を捕まえるところを見てみたいと言うことで、別の友人が私がキイロスズメバチに刺される攻撃される様子を見にやってきました。 

その話は置いといて・・。

その帰りに、見に来た友人にお土産を一つ手渡されました。それは虫。というかキノコ。

俗に冬虫夏草と呼ばれる、キノコに寄生された虫でした。

もともとすごく興味があり、気になっていたのですが、実際に見てみると。

『目が白くてお前はもう死んでいる状態!。口からキノコ。尻からもキノコ。凄い・・気持ち悪くて、ヤバイ、超格好良い!。』

美しくも悍ましいこの姿に、私のハートは一瞬で鷲掴みにされました。

これが頂いたオサムシタケと呼ばれる冬虫夏草。プリンカップに濡れたキッチンペーパーで育成してみることに。頂いた時からちょっとだけ成長したので白い小さな胞子(分生子)が発生してます。

”ヤバイ、実際に出ているところを見つけてみたい!”。

ところがその時期は非常に予定が立て込んでいて、思い立ったら即行動!とはいかず。2週間後、一緒に探しにいくことになりました。

冬虫夏草を探しに。

探すときには万全な準備を施す。と言うことで、大量のプリンカップとティッシュ。掘り起こすためのナイフ。(G・SAKAIの サビナイフ) それと虫除け。(超重要)。などをリュックにつめて探しにいきました。

※私の愛用しているリュックはグレゴリーのデイアンドハーフ(アメリカ製の最後のやつ)。本当に思い入れがあり、もうかれこれ二十数年は使っています。雨に濡れてぐしょぐしょになろうが、釣り餌の汁が溢れようが、ガンガン洗っても平気だし、行き先で出たゴミもガンガン詰め込んで、思い出いっぱい、ゴミいっぱい。死ぬまで使っていくと思います。

友人と合流したのち探索開始。最初は自力で!と意気込んだものの・・・。実際に生えているものが想像できなくて、なかなか見つけることができません。

ヒントをもらいながら徐々に目的に近づいていく。(ヒントを持つという意味がみなさんわかりますか?)。

見つからずヤキモキするも楽しい。

そうこうしているうちにようやくひとつ見つけることができました。

”こんなになっているんだ”。

オサムシタケ。地生型の冬虫夏草。子実体(軸の部分)と分生子(胞子の部分)がこのように生えてくる。
カメムシタケ。アオクサカメムシかな?。このように土からではなくそのまま生えてくる(気生型)ものも。
同じくカメムシタケ。明るいので一目でわかりますね。
カミキリムシに発生するボーベリア(昆虫病原糸状菌)ブロンニアーティ。この性質を利用して微生物農薬に使用されているそう。

面白いことに、実際に目にして土の中から生える形状を理解できると、短時間のうちにはっきりとわかってくるようになります。この辺りは普段のキノコ探しに通じるところがあるなぁと思いつつ、これをきっかけに今まで完全スルーしていた、小さなキノコにも反応するようになるのですが・・・。

途中キイロスズメバチにかなり好かれながらもひたすら探し続けました。(フェロモン出しまくっていた)。

その中でも、この日見つけた最大のヒットはこのツクツクボウシタケ

ふたつ生えていると思って掘り起こしてみると・・・。

やった!。見つけたツクツクボウシタケ。
掘り起こしてみるとなかなかの迫力です。

”つながっている!”。なんと、ひとつの小さなツクツクボウシの幼虫から伸びていました。

”これこれ!こういうの!”。自分の想像の斜め上からやってくるもの。

本体は2センチほどしかないはずなのに広がった状態では15センチはあったと思います。

人に伝えるのはなかなか難しいのですが、レアとかそう言うものが好きなわけではなく。(それはそれで嬉しいですけど)。

”え?なんで?”と思わせるものが私は大好きです。

突如現れる今まで見たことがないいきもの、や普段見慣れているいきものでも、突然現れる変化が起こったときに世界がぐるっと回転するというかなんというか。

フィールドに出る最大の理由は、自分が知らない瞬間を実際にみたいからなのかな?と思ったりします。

あ、それと地生型は見つけて掘り起こすと、分解されてしまい中が入っていないいわゆる”ハズレ”があったりします。

綺麗に掘ったあと、指で確認すると袋状の菌糸の中に何もいなかったときはとてもがっかり。

それもまた、変化ではあるのですが・・・。

その日はカニ蚊に食われながらも、なんだかんだで、朝から夕方まで。たった一日でしたが、結構たくさんの種類の冬虫夏草を見つけることができ、帰宅しました。(他にも好物の昆虫なども見つけられて大満足)。

綺麗にしないと始まらない。

採取した冬虫夏草は土だらけ(じゃないものもありますけど)。

なので筆などを使い丁寧に土を落としながら洗い、菌糸に包まれた部分を絶妙なさじ加減で剥き取っていき、綺麗にしていきます。

※この時胞子がある程度取れてしまったりしましたが、二日ほど様子をみていたら少しずつ戻ってきました。

当日、見つけることができた冬虫夏草など。(一部ボーベリア、不明なものを含む)。洗ったため胞子がだいぶ取れました。

たった1日でこれだけみられたら十分です。すごい楽しい。

あまりにも面白すぎてその後すぐに再訪したり、真夜中、別の友人と夜中に探しに行ったりして。(完全に不審者)。

数日もすると、見つけることができなかったセミノハリセンボンやクモタケも見つけることができました。

ヒグラシについたセミノハリセンボン。これもまた、露出したまま生えてくるアナモルフ菌類の冬虫夏草。
クモタケ。マッチ棒のような風貌なのでわかりやすい。持ち帰って洗ったら”ゲッ!”。バラバラになってしまいました。

と、ここまで話してぶち壊しあれですが、かれこれ4年前のお話。

その後も、あるときは山奥。あるときは竹林。あるときは墓場。などなど、今もキノコや虫探しのついでに探したりしています。なかなかみたいものとは出会えることができませんが・・・。

それと、持ち帰るのに慎重に行わなければならならず、地面を掘り返す必要があるため、道具を常に携帯する必要がある点などから見つけることがあっても地生型のものは持ち帰らずに時間だけが経過していきました。

4年経って開けてみた。

ここまで採取してきた冬虫夏草。

掃除してひとしきり観察した後は、プラカップに濡れたティッシュを敷いて、蓋をして保管。

そのまま、濡れたティッシュが乾いても水を足すことなどはせず、たまにチェックしながら保管し続けて4年が経ちました。

せっかくなので、4年間、密閉環境で保管した冬虫夏草はどのように変化したのか・しなかったのか、保管前後のビフォーアフターを紹介したいと思います。

ボーベリア(昆虫病原糸状菌)などの菌類もあるため、飼育している昆虫や蜘蛛などに感染しては大変なので、別の部屋で保管していました。

人にあげたものもあるので全てとはいきませんでしたが、いくつか確認。

Before。最初に頂いたアオオサムシについたオサムシタケ。2週間ほど経つと見事に胞子(分生子)の花?が咲きました。
After。萎れた印象は否めませんがそれでも雰囲気があります。
Before。ツクツクボウシタケ。
After。覆われていた菌糸は綺麗になくなり全体的にスリムになった印象。
Before。ツクツクボウシタケ。
After。面影があんまりないけどこれはこれですごく良いです。
Before。ツクツクボウシタケ。マタンゴって知ってます?。それとセミ人間のフュージョンにしか見えなかった。格好良い。
After。なかなか可哀想な・・・。中身もほとんど乾燥して、抜け殻にかろうじてついているような感じに。。
Before。カメムシタケ。ビビッドなオレンジが特徴的ですね。
After。ほとんど形状を残して保存されていました。
Before。オサムシタケ。冬虫夏草=地味とは思えないこの美しさ。
After。なんか見てると特異点味がありますね。
Before。オサムシの幼虫に寄生したオサムシタケ。
After。しっかりと残りました。子実体の数が増えているのがよくわかりますね。
Before。オサムシの幼虫に寄生したオサムシタケその2。胞子が綺麗に増えました。
After。頭とお尻からだいぶ伸びて中央部分は逆になくなりました。
Before。非常に珍しいと言われた、センチコガネの冬虫夏草。最初はボーベリアついてるくらいにしか見えなかったけど、短時間の間に成長した。
After。最初から比べるさらに成長して乾燥したみたい。分生子はなくなったけど、子実体は綺麗に残った。気になっていた背中側からは伸びて来なかった。反対側はセンチコガネ特有のきらきら加減で非常に綺麗。(写真はない)。
Before。何かの繭(イラガ?)から出てきた冬虫夏草。
After。良くも悪くも、大きく変化することなく比較的形状は保たれていました。で、結局これなんなのだろう。割って見るとかありかな??。
Before。セミノハリセンボン。扱いが非常に難しい。
After。乾燥したため、収縮はしたものの、ほぼ完全に残ってる。

ここまでの結論:11点紹介したうち、見た目の変化が少ないと思ったものは5点。全体的に覆っていた白い菌糸は分解?されて元の昆虫の姿が浮き出てきてるような気がします。気生型は変化が少ないのかもと思ったり。

それと子実体はシワが増え萎縮した感じに。

ほかは、分生子が残ったり消えたり、子実体が増えたり減ったり、時間の経過と見た目の関係性が全く掴めず。そのため、元の画像と比較すると、全然違うように見えたりするものも・・。

さて、続いてここからはボーベリア菌に侵されたもの。

Before。オオスズメバチについたボーベリアバシアーナ。ハチタケを探しているけど未だ巡り会うことはできず・・。
After。4年経ってもほとんど変化なく残っている。
Before。キボシカミキリについたボーベリアブロンニアーティ。見た目は一緒なのに名前が違うのなんでだろうか。
After。ほぼ変わらず。
Before。クマゼミに寄生したボーベリアバシアーナ。大きいので迫力ありますね。
After。全然変わってません。
Before。オオゾウムシに寄生したボーベリアバシアーナ。
After。こちらも同じく。
タマムシ。4年経ったけどほぼ変化なし。なんか変化したら面白かっただろうに・・・。(元の写真は上面のみだったので割愛)。

結論:5点とも大きな変化は見られませんでした。(気生型)はやはり変化が少ないのかもしれませんね。

見つけたボーベリア類はあまり変化がないことは分かってはいたものの、なんかの間違い(センチコガネのように)でも起こらないかなぁと思っていましたが、全く起こりませんでした。

それでも、撮影してまとめていったら、探しに行った思い出が呼び起こされ、また行きたいなと思うわけで。

これからも、少しずつもっと増えていくと思います。

次にやってみたいこと。

なんとなくですが、感覚が掴めているので手近なもので培養できないかな?と考えています。

あれとあれならとかこれとこれならなど。な程度ですが、ただ闇雲にやるのではなく、少し興味の幅を広げていければ良いですし、まだみたことない冬虫夏草なので、もしできたら絶対に楽しいと思っています。

まぁ、いつになるかわかりませんが、顛末はまたブログに書きたいと思います。

ということで、最後までお読みいただきありがとうございます。

また見てね!(おわり)。

参考文献:冬虫夏草生態図鑑

コメント

  1. ああ言えば より:

    無知すぎて、コメント控えてましたが、これだけはお伝えしたい。
    読んで、拡大して写真見て。ほ〜、へえ?と朝から楽しい時間を過ごさせてもらいました。

    • ペン より:

      コメントありがとう。
      画質はわざと最低に落としているので、拡大すると綺麗では無いかもしれないですが、楽しんで貰えたら幸いです。

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